“Don’t put all your eggs in one basket.”
「ひとつの籠にすべての卵を盛るな」
株や投資の世界では基本のキ、教科書の一番最初にでてくる話です。株や投資の経験がある人なら、一度は耳にしたことがあると思う。あなたが買った卵をひとつの籠に入れて運んでいるとすると、籠が落ちた時に卵も全部割れてしまう。だから、1箇所にまとめておくんじゃなくて分けて持ちましょうねと。要するに「分散投資」を勧めているわけです。
分散させてリスクヘッジ・・・なんだか良さそうに聞こえる。それなら、仕事もいっしょじゃない?ひとつのことに集中するよりも、いろいろと分けて進めていった方が良さそうだ。
・・・と、こんな具合にタスクの同時進行(マルチタスク)がはじまる。特に、やりたいこと・やるべきことがたくさんある人にとっては魅力的なやり方にみえるだろう。「やっている感」もあるので、なんだか充実した気分にもなる。でも、そんな日は長く続かない。投資の世界では一丁目一番地の話でも、僕ら人間の行動に関しては話が違ってくるからだ。
シングルタスク vs. マルチタスク
マルチタスクとは、「現在進行中のタスクがあるにもかかわらず、同時に別のタスクに取りかかること」をいう。一方、シングルタスクとは「目の前のタスクのみに集中すること」をいう。
今からちょっとした思考実験をやってみようと思う。(自分の場合はどうなるか?と考えてみてほしい)
条件は下記のとおり。
・やってみたいタスクが3つある(A,B,C)
・ひとつのタスクを完了させるのに3週間かかる
・1個のマスで1週間
以上、条件はいっしょで、タスクをひとつずつこなすパターンと、同時進行でこなすパターンを比較してみよう。
まず、ひとつずつこなすパターン(シングルタスク)。
AAA→3週間後完了、BBB→6週間後完了、CCC→9週間後完了
つぎに、同時進行でこなすパターン(マルチタスク)。
ABC→未完了、ABC→未完了、ABC→7週間後にAが完了、8週間後にBが完了、9週間後にCが完了。
一見すると、どちらも9週間後にはタスクがすべて完了しているので差がないようにみえるが、本当にそうだろうか?もうひとつ別の観点からみてみよう。
シングルタスクの場合、タスクAは3週間後には完了している。ということは、4週間後にはなんらかの成果が出るはずだ。タスクが新規のプロモーションだとすれば、見込客が集まりだす。あるいは、タスクが新しいサービスだとすれば、お金が入ってくる。同じようにタスクBも7週間後には、なんらかの結果がわかるはずだ。
これがマルチタスクになるとどうだろうか?
マルチタスクの場合、タスクAが完了するのは7週間後なので、成果がでるのは8週間後になる。同じようにタスクBが完了するのは8週間後。つまり、結果がでるのは9週間後というわけだ。
どうだろうか?マルチタスクと比べて、シングルタスクの方が成果のマス(+マーク)が多いことがわかる。3個と9個、その差は3倍だ。
これはあらゆることにあてはまるんじゃないかと思っている。WEB製作、プロモーション企画、読書・・・。
マルチタスクの罠から抜け出す方法
以前、ジャンルの異なる本を3冊同時進行で読もうとした時があって1年くらいやってみたけれど、ぜんぜんダメだったことがある。1冊読み終えたモノはなかったと思う。どれも2章とか3章くらいで終わっているというオチ。。
先ほどの例では1マスを1週にしたけれど、それが週単位ではなく月単位だったとしたら?何の成果もでないまま、半年以上やり過ごすことになる。。机上の計算だったとしてもこれだけの差が生まれるし、実際にはもっと大きな差が生まれる。実務の面で考えれば、物事はそう単純には進まないからだ。
普段の生活をイメージしてもらえばわかるように、世の中は自分の思うとおりには進まない。「明日中にブログを仕上げよう!」と考えていたとしてもいざその日になってみると、子どもが熱を出したとか、旧友から飲みに誘われたとか、旦那と大喧嘩したとか・・・そのような大小さまざまな理由で、たちまち自分のスケジュールはぐちゃぐちゃになる。気づいたらもう夕方になっていて、結局その日は何もできなかったりと、そんな日が何日か続く。そうなると当初の予定はどこへやら・・・そうやってどんどんフェードアウトしていく。。
マルチタスクになると、実はすべてのタスクはドミノ倒しのようにつながっている。個人事業主やひとり社長の場合、やるのは”全部あなた”だからだ。ひとつ倒れ出すと連鎖してあっという間に計画が狂ってしまう。先ほどの例でいえば、タスクAで起きたことがBにもCにも波及してみんなダメになる。もっというと、その影響は仕事だけではない。プライベートにも支障をきたすことになる。誰かを恨んでも仕方がない。個人事業主やひとり社長ってそういうものだと思う。
だからこそ、ひとつのことに集中して取り組んだ方が良い。単純な話だが一番大事なことだ。理想論に聞こえるかもしれないけれど、少なくともマルチタスクにならないように、なっていたら「今の状況はヤバい!」と感じられるようになって意識しておくべきだろう。
補足:外注と丸投げの違い
いっそのこと「外注」すればイイんじゃね?そう、そのとおり。手が足りないのなら、他の人にやってもらえば良い。ただし、それはあなたがすべての作業工程をきちんと理解して適切な指示が出せる場合に限る。
自分にはよくわからないから、なんとなく他の人にやってもらおうとする・・・世間ではそれを「丸投げ」と呼ぶ。「丸投げ」が成立するのは、相手と強い信頼関係がある時だけ。そうでなければ、あなたの望む結果は期待できないだろう。それくらい信頼ができてスキルのある人間って、あなたの周りに何人いるだろう?
だからこそ、最初のうちは自分でやってみるべき。マルチではなく、シングルタスクでひとつずつこなしていくこと。遠回りのようで、実はそれが複数のタスクをこなす一番の近道だ。
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